毎年暮れに福岡と東京の三越で開いている「チロリアン・スパイスブーケ展」で使用する材料や、 珍しいクリスマス・グッズの買い付けのために、今年2010年の8月の終わりから9月にかけて2週間、 ベニスとウィーン、ザルツブルクへ出かけました。 以下、旅のレポートです。 ベニス |
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成田からウィーンまでオーストリア航空で11時間の空の旅ですが、ウィーンに着くと どうしてもあとひと飛び、50分間のフライトをしたくなる場所があります、それがイタリアのベニスです。 このところ毎年のようにオーストリアを訪れていますが、2回に1回は必ずベニスまで足を延ばしています。 ベニスには私を引き付ける何かがあるようで、それはこの町の景色であり、よそにない独特のたたずまいであり、 おいしい食べ物であり、また、この町でしか買えない「チロリアン・スパイスブーケ」の材料となる 素晴らしいビーズやリボン、それに毛糸などでもあります。 というわけでウィーン時代から数えて、ベニスは今回で14回目の訪問となりました。 |
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サンマルコ広場 |
もちろん今回もいつものホテルに着いてすぐに駆け込んだのは、近くのパスタ屋さん「ダ・ラファエリ」。 メールでレナート社長に8時に席をお願いしていましたら、いつもの運河沿いの指定席が用意されていました。 戦後すぐに田舎から出てきた先代の兄弟が、ここのゴンドラ乗り場のすぐそばに開店した小さなお店も 今では人気の川べりの席から室内まで200席を超える大きなレストランとなり、日本からも観光客が 押し寄せるようになったそうで、日本語のメニューも完備しています。 |
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ゴンドラ乗り場のすぐそばのレストラン | レナート社長と | ||
ここのお料理をいただくと、いつも 「ベニスに来た!」という感激に つつまれます。 |
今回のベニスは、ちょうど「ベネチア・ビエンナーレ」や「ベネチア映画祭」の時期と重なっていましたが、 私の関心は有名イベントより、去年完成した新しい現代美術館「プンタ・デラ・ドガーナ」に行くことでした。 ここはサン・マルコ広場の対岸にあるドガーナ地区のサルーテ教会の隣にある、「海の税関」と呼ばれる17世紀の建物を、 「プランタン」や「グッチ」などを所有するフランスの財閥で美術コレクターとして有名なフランソア・ピノー氏が買い取って作られました。 イタリアではミラノのアルマーニ・ビルなどの建築で、実績と人気がある日本の建築家・安藤忠雄さんの手によって改造され、 去年オープンしてベニスの新しい名所となっているところです。 |
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サンマルコ広場の対岸のサルーテ教会 | |||
館内に入ると、ロビーと展示室を仕切る 天井から床までの赤と白のプラスチック・ ビーズの すだれに驚かされる。 これも有名作家の作品だとか。 |
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フランソア・ピノー財団 「プンタ・デラ・ドガーナ美術館」 |
安藤さんの作品といえばすぐにコンクリート打ちっぱなしの建築を思い浮かべますが、この美術館は17世紀当時の 石材やれんが、それに大きな木の梁などをそのまま生かした上で、お得意のコンクリートで補強した感じで、よく調和しており その上、徹底してベニスの海の自然光が取り入れられています。 |
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まばゆいばかりの自然光 | となりは暗室の中に光る作品 | 日本人アーティスト村上隆さんの作品 |
この美術館のもう一つの名物は、実は外にあります。 昔は税関だった三角形の建物の外の、「税関岬」と呼ばれる小さなスペースに立つ「カエルを持つ少年」の像です。 これはアメリカの作家、チャールズ・レイの作品で、マーク・トウェインの「ハックルベリー・フィンの冒険」にヒントを得て 作られたと言われていますが、物語の中に出てくるいたずらな少年が、ベニスの海をまさしくミシシッピ河に見立てて、 「ひょい」とカエルを取り上げたようにも見え、訪れる人たちに大変な人気です。 また、この像はベニスを行きかう船からも見える絶好の位置にあり、どの船からも乗客が身を乗り出して見ています。 |
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閉館時には頑丈なアクリルの箱に入れられて カギがかけられている |
開館時は常にガードマンがついている | カエルを触ろうととする観光客に、すかさず ガードマンの制止の手が伸びる |
これからウィーンへ向かいます |
ウィーン 1年ぶりのウィーンの街は、8月とはいえ、ベニスとは違って気温20度を切る涼しさ、 一番賑やかなケルントナー通りも、去年から続いていた工事も終わり様子が少し変わっていました。 まず、ハイヒールに傷がつくと女性に不評だった昔ながらの石畳が姿を消し、コンクリート・タイルに変身。 歩き疲れた人が腰を下ろせるベンチも設置され、伸びすぎていた街路樹も低い木に変えられていました。 |
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ケルントナー通り |
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グラーベン通り | シュテファン寺院 | シュテファン広場 | |||||
今回のウィーンでは、もちろん「チロリアン・スパイスブーケ」の材料を買うのが目的ですが、そのほかにも 最近日本でも注目されている、ウィーンのカフェ料理の勉強もあります。 カフェ発祥の地とも言われているこの街では、伝統的にカフェではコーヒーだけでなく軽いお食事をとる人も多く、 そういった種類のメニューが豊富で、伝統の中にも内容が日々進化しています。 ここでは、朝食もカフェ、おやつもカフェ、その上お客さんの接待もカフェという人種も多く、何時間いても 気おくれすることもなく、これはウィーンの文化とさえ言われていますが、土地の人たちが行く有名店をご紹介しましょう。 まずこの日、遅い昼食に入ったのは、ケルントナー通りのケーキの老舗、「ハイナー」のカフェです。 |
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ハイナー菓子舗 | |||||||
ウィーンのカフェには必ずハーブ・ティーが飲めるのが特徴ですが、この日は胃にやさしいカミーレン・テー(カモミール)を いただきました。 さて、土地の人たちがお茶を買ってちょっと一休みする有名店がこの「ハース&ハース」です。 ここはウィーンの中心、シュテファン寺院の 裏にある古い茶舗で、世界中のお茶を扱う大きな店ですがカフェも有名で、特に夏の間は裏庭の木陰が心地よく、いつも混んでいます。 |
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ハース&ハース茶舗 |
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こちらは王宮近くにある老舗の高級食材店「カメール」です。 らくだ印のビン詰めやハム、ソーセージからチーズまで、 古くから地元の食通が訪れる専門店です。 しかしこのお店で最も混んでいるのは、カフェ、サンドイッチ・コーナーそれにもちろんレストランです。 |
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レストランは予約なしでは昼食、夕食ともほとんど無理と言われるほどの人気。 歩道のカフェもご覧の通りで、観光客が席を見つけるのはほとんど無理のようです。 サンドイッチ売場も地元の人たちが、入れ替わり立ち替りやってきて、急ぐ人は立ったまま小さな「アクテル」(125cc)と呼ばれるカップで ビールやワインを飲みながら食べています。 昔ベートーベンも立ち寄ったと言われるこの店のおいしい人気のサンドイッチは、あっという間にプレートが空になります。 |
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また、このお店のケーキ売場には、このまま通り過ぎるにはもったいないほどの 可愛いハート形のケーキが並んでいましたので、ついカメラに収めてきました。 |
ウィーンで最後にご紹介するのは、ここに住んでいたころよく通ったウィーン美術史博物館です。 美術館や博物館の数が多いことで有名なウィーンで、一つだけ見るとすれば迷わずお勧めはここ。 |
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美術史博物館 | ブリューゲルの「農民の結婚式」の前で記念撮影 ここはフラッシュを使用しない限り写真も模写も自由です |
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この博物館は、ブリューゲルの作品が世界一そろっていることで有名ですが、カフェの「ブリューゲル・トルテ」というケーキが いま大人気ということで、久しぶりにやってきました。 |
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ブリューゲル・トルテ (食産業の大手 「ゲルストナー社」が このレストランを担当 するようになって 作り出されたもので、 独特の甘さと香りで 人気を集めている) |
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マリア・テレジア像を挟んで、私の後ろに見える同じ形の建物は自然史博物館 | ||||||
お隣のレストランでは、日曜日のお昼ということで観光客にも大人気のランチ・ビュッフェが始まっていました。 | ||||||
「ホイリゲ」(ぶどう農家の居酒屋) |
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オーストリアでもここウィーンにしかないのが「ホイリゲ」です。 ホイリゲはぶどう農家が自家製のワインをその庭先や部屋で提供する限りは酒税を免除するという昔の法律により、 出来たてのワインを安く飲ませる居酒屋で、その農家が軒を連ねているのがウィーンの森のふもとのグリンツィング地区です。 ここにはベートーベンが住んでいた家が何軒かありますが、彼が交響曲「英雄」を書いた家が、エロイカ・ガッセ(英雄通り)にあり 「エロイカ・ホイリゲ」と呼ばれ、今でも営業していますが、このあたりは昔から観光バスが連なるウィーンの名所となっています。 |
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グリンツィング通り |
軒先につるした松の枝が、できたてのワインを飲ませる 「ホイリゲ」の看板 |
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ジョッキに入れたワインと、キッチンで買ってきた簡単な料理が人気で、観光客だけでなく地元の人たちの夕食の場所として ウィーンには欠かせないお店となっています。 私はウィーンのお友達に会うときには、グリンツィングから少し入りこんだ地元の人たちが集うお店でくつろいだお食事をします。 |
これからザルツブルクへ向かいます |
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ザルツブルク空港の正式名称は 「アマデウス・ヴォルフガング・モーツアルト空港」 |
双発プロペラ機でウィーンから50分、ザルツブルクへ到着しましたが、 きょうはこれから車でベェルフェンという町へ向かいます。 と言いますのも、きょうは今年の「ザルツブルク音楽祭」の最終日で、 定宿としている旧市街のホテルも満員、ならば今夜はベルフェンの 有名なオーベルジュで夕食をとり、一泊してあすザルツブルクへ入るという計画に ザルツブルクの友人ご夫妻も付き合ってくれることになったのです。 |
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ベルフェン |
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ここが町のメイン・ストリート | ホーエン・ベルフェン城 | |||||||||||
ベルフェンという町は、ザルツブルクから40キロのところにある小さな保養地で、世界一大きな氷の洞窟と小さな山城があるくらいで ほかは何もないひなびた町でしたが、最近この町を有名にしたのはカールとルドルフのオーバウアー兄弟です。 二人はこの町のホテルの家に生まれましたが、若いころからヨーロッパ各地で料理人としての修業を積み、故郷に帰ってきて 実家を自分たちの理想通りのホテル/レストランに改装してたちまちのうちに世界中からセレブが集う場所に変身させたのです。 兄弟の理想とする素晴らしいキッチンとレストラン、究極のメニュー、それに超モダンな客室を完備したホテル、 そして今ではこの田舎町にありながら、オーストリアでただ2軒だけのミシュランの星をもらうレストランへと発展しました。 この兄弟シェフは日本にも何回も招かれ、今では日本の食通がザルツブルク空港から食事に駆けつけるそうです。 そこで私もこの兄弟シェフのお料理をいただこうとやってきたのです。 |
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レストラン/ホテル「オーバウアー」 |
ルドルフとカール、オーバウアー兄弟 |
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ザルツブルクの友人ご夫妻 |
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それでは写真だけで恐縮ですが、今夜の素晴らしいお料理をご覧ください。 |
ここにご覧いただきましたのがこの日のディナーですが、私の感想はこれまでのオーストリアの料理に 比べると繊細で香りがよく、深い味わいでした。 良質のオイル、フルーツ・ビネガー、岩塩、フレッシュ・ハーブやスパイス等を使い、色合いや盛り付けが 細やかでおいしく、食感が軽く、よく研究された料理という感じでした。 さすが世界中から食通がこのレストランを目指してこの町に来るという、味覚のセンスに感心したディナーでした。 |
翌朝は雨で、部屋の窓から見える山には雪が積もり、朝食を済ませたらすぐに ザルツブルクへ向かうつもりでしたが、ここの朝食がまた素晴らしく ゆったりと頂いてしまいました。 |
感激のディナーの翌朝早くの時間ですから、普通のコンチネンタル・ブレックファーストと思って食堂へ行きましたら、昨夜とはまた違った 暖かい感じのテーブル・セッティングで朝食が用意されていました。 一言でいうとこれまでいただいたことがないような内容の、フレッシュでリッチな内容でした。 しぼりたてのオレンジ・ジュースと野菜ジュース、 ヨーグルトの上には7種類のフルーツ、はっと思うほどのおいしいスクランブルト・エッグ、よく吟味されたチーズなどなど、味も盛り付けも運ばれるタイミングも、 これ以上のものはないと思わせる素晴らしさ。 2日間にわたって大いに勉強をさせていただいた滞在に感激して、最後に昨夜からお願いしていたオーバウアーさん兄弟の「新オーストリア料理教本」という本に お二人のサインをしていただき、お兄さんのカールさんと記念撮影をしてホテルを後にしました。 |
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ザルツブルク 昨日までは「ザルツブルク音楽祭」で世界中から集まる音楽ファンで大賑わいだったこの旧市街も、きょうはまた違った観光客押し寄せ 一日たりとも訪問者が途絶えることがありません。 商店は冬物への入れ替えに忙しく、その間を縫うように観光客はお土産を探しています。 私も11月に福岡と東京で開く「チロリアン・スパイスブーケ展」で私たちのブーケとともに、お客様にお買い求めいただくクリスマス・グッズを探して 今日から歩き回ります。 |
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旧市街の中心、ゲトライデ通り |
モーツアルト像 |
モーツアルトの生家 |
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この街でも年々スパイス・ブーケや手芸品を売るお店が少なくなり、来るたびに.去年まであったはずの老舗が姿を消しています。 |
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私の好きな景色「馬の水飲み場」からお城を望む |
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こうして限られた時間の中でお買い物を続けながら、ザルツブルクで必ず私が訪れるお店の一つがいつもこのホームページでご紹介している 「ゲバンドハウス」です。 ここは大きな民族衣装のメーカーが、その商品のショールームと民族衣装博物館、それにレストランを併設している場所です。 |
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民族衣装博物館 |
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試着室 | きれいに磨かれた窓にハチが |
窓の向こうにはドイツの雪山 | このきれいなショールームには、 清潔な試着室があり、そこには小さなテーブルの上に 冷たい水やキャンデーが置いてあります。 この日は窓の外に、こちらでは「幸運のシンボル」と されるハチが、きれいに磨かれたガラスにとまっていて、 つい「ラッキー!」という言葉が口から出ました。 またここは安くておいしいランチも有名で、 昼食時には、外からもわざわざ食事に来る人が多く、 この日は寸法直しの間にここで食事をいただきましたが、 予約なしで席があったのが幸運でした。 |
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