毎年暮れに、福岡と東京で開く「チロリアン・スパイスブーケ」の展示会に使う材料と、
 展示会の会場を飾るヨーロッパのかわいいクリスマス・グッズを買い付けるため、

 それにお料理の勉強も兼ねて、今年2008年も8月から9月にかけて2週間、イタリアとオーストリアを
 回って来ました。
 以下、旅のスナップをどうぞ。

  今回の旅のスタートもベニスから・・
 ウィーン時代を入れるとこれで13回目の訪問となりましたが、何回来ても、
 「ヨーロッパに向かうときには再び訪れたくなる」、ベニスはそんな魅力をもった不思議なところです。


  ベニスには、「水路にコインを投げこんだ」とか、「最初に訪れた日が月夜だったら・・」とか、
 「帰るときに再訪を誓った」とか、再び訪れるためのジンクスとなる古い言い伝えが色々あるということですが、
 1978年に私が最初にここに来たときに、きっと何かこのどれかに当たったのでしょう、 
 今回もまた来てしまいました。



ベニス

  車輪がついた乗り物が一切ないベニスでは、バスと呼ばれる連絡船や、タクシー(モーターボート)に乗るか、
 あるいは優雅にゴンドラにゆられて水路を行く以外には、ただ自分の足に頼る以外に移動のすべがありません。


  しかし何回もここを訪れて歩き続けていると、水路に沿って複雑に交差する石の歩道も、水の上をまたぐ橋も
 この小さな町に張り巡らされた神経のように、まるで生き物のようにつながっているのがよくわかるようになります。
   フェニーチェ劇場
  
  イタリアで勉強をして帰国されてから、60歳を過ぎて1990年に作家としてデビューされた、
 須賀敦子さんのお名前を知ったのは、「ヴェネツィアの宿」という本でした。 
 それまで私はこれほどの美しい文章の存在を知りませんでした。
 
  しかし残念ながら須賀さんは、粒よりの何冊かの本を残して、98年に惜しまれつつ亡くなりました。
 その本の中に出てくるベニスの「フェニーチェ劇場」のすぐそばに毎回宿をとりながら、またその前を
 何十回も通りながら、一度も劇場の中を見たことがなかった私は、今回初めて内部を見ることが出来て
 長年の夢がかなった思いでした。

 
  火事で焼失したほかの歌劇場の代わりに18世紀に再建され、「フェニーチェ(不死鳥)劇場」と名付けられた
 この劇場は、その後2度も火災にあいながら、不死鳥のようによみがえり今日に至っていますが、
 私が見たウィーンの国立オペラ劇場やミラノのスカラ座に負けず劣らず、素晴らしいオペラハウスでした。

 
  


  このパスタ屋さんは、定宿にしているサンマルコ広場そばのホテルのすぐ近くにあり、
 私はここがベニスで一番と思っています。

  日本から飛行機を乗り継いでベニスに着くのは、だいたい現地時間の夕方7時ごろですが、
 いつも着いたらホテルに荷物を置いて、まっさきにこの店に飛び込みます。
 今回は空港からのモ−ターボートでこの水路を通りながら、顔見知りの陽気なボーイさんを見つけて
 「8時に二人お願いね」と大声で頼んでおいて駆けつけました。

 一度、「ここの生ハムがベニスで一番」とオーナーのレナートさんにに言ったら、それからは毎回
 必ず季節の果物を添えて出してくれます。
 この日はイチジクでした。 





  海の幸は、何といってもこの「ホテル・モナコ」のレストランです。
 目の前の海を行きかう豪華客船やゴンドラを見ながらのお食事は最高です。

 この日のメニューは、白身の魚、それにエビとズッキーニでした。



ウィーン


  ウィーンに来る時には必ず昔の先生や、親友に
 会うことにしていますが、この街のたたずまいは
 何十年たっても変わらないものの、時代とともに
 変わるものもまた数多いようです


  変わるものの一つにレストランがありますが、
 私は毎回土地の人に聞いて、評判の場所を訪れる
 ことにしています。 来るたびに毎回新しい発見が
 ありますが、今回印象に残ったのは・・・・。




  この古いレストランは、3年前にこの公園の中に移転し、
 オーストリアで2軒だけのミシュランの星も獲得、今ウィーンでは
 一番の人気を誇っています。

 



 シェフの奥さんが、陣頭に立っておもてなしを担当、
ご主人のきょうのメニューを親切に説明して、
ゲストの心をつかみます。
 

  お料理も伝統に負けないシェフの若さを強調したモダンさが印象に残りました。
 この日は晴天に恵まれ、さわやかなこのお庭も素敵でしたが、ドナウ運河を見下ろす
 お部屋のほうもすばらしく、もう一度来たくなるお店でした。



 ウィーン応用美術館 

 
                                                     
  
  ハプスブルク王朝の遺産ともいえる、ウィーンの数多くの美術館や博物館を訪れる楽しみの一つに、
 併設されているそのレストランの素晴らしさがあげられます。
 ここにご紹介する「ウィーン応用美術館」のレストランもその一つです。


  この美術館は、略してMAKと呼ばれており、ウィーンのカフェでよく使われている、
 曲げ木の籐椅子などのコレクションから、舞台のデザインやビデオの映像作品まで展示されていますが、
 最近の話題は何といっても、「MAKレストラン」です。


  エステライシャー(その名も「オーストリア人の」)という、最近まで三ツ星レストランの有名シェフだった人が、
 心機一転これからはウィーン料理だけに専念すると宣言して、このレストランに迎えられたのです。
 
  この美術館が美術品のコレクションだけではなく、味の芸術にも挑戦するという姿勢が高く評価されています。


  
   このレストランのメニューはいわゆる「ウィーン料理」だけですが、ユニークなのはそのメニューが
 「トラディショナル」(昔からのウィーン料理)と、「モダン」(新しい料理)の二つに分かれていることです。
 
  私は「モダン」をいただきましたが、こちらは有名シェフが伝統料理の新しい味の表現にチャレンジしているもので、
 長年にわたりウィーン料理を研究している私にとりましては、大変勉強になりました。



王室食器博物館

  もう一つ、博物館の話題ですが、ウィーンにはハプスブルク王家が残した膨大な量の
 食器、銀器、カトラリーなどが王宮の中の博物館で公開されています。
 食器のほか有田焼や中国の景徳鎮など陶器のコレクションにも目を見張るものがあります。


 王冠をかたどった珍しい
 ケーキ型をはじめ、
 ここにしかない、西洋料理に
 関する道具の歴史の
 集大成を見ることができます

メルビッシュ湖上音楽祭

  
  一度は行ってみたいと思っていたこの湖上音楽祭、ついに念願がかないました。
 ここはオーストリアとハンガリーの国境にある、ノイジードラー湖というところで、
 湖を背景に使った特設ステージと5千席の客席を作って、この30年間夏休みに
 毎年オペレッタの公演を続けています。

  今年の出し物はチェコの作曲家ラルフ・ベナツキー作曲の「白馬亭にて」で、
 私が何回も訪れた、きれいなザンクト・ヴォルフガング湖のそばの有名ホテルが舞台となった
 オペレッタです。  

 今回私はその公演の最終日にオペレッタを鑑賞し、その翌日には舞台となった「白馬亭」に
 宿泊しようという計画です。


  
  この日は最終日だけに舞台・客席ともに盛り上がりましたが、終演と同時にステージ裏の湖上に
 花火が打ち上げられ、ひと夏の公演が、興奮と拍手の中さらに華やかにフィナーレを迎えました。

  それにしてもオーケストラが繰り返し演奏するオペレッタのフィナーレをバックに、こんなにたくさんの
 音楽つきの打ち上げ花火を見たのは初めての経験でした。

 


ザンクト・ヴォルフガング湖
 さて、こちらがザルツカマグート
地方の湖水地帯にある数多くの
湖の中で、最高の景色を誇ると
言われるザンクト・ヴォルフガング湖の
そばにある、本物の「白馬亭」
ホテルです。


 このホテルは、1930年にラルフ・
ベナツキーがオペレッタ「白馬亭にて」
を作曲して、ベルリンで7年間連続
公演の大ヒットとなるや、その名前も
「白馬亭にてホテル」と呼ばれるように
なったそうです。

いまでもホテルの壁には、
ベナツキーの石のレリーフが
飾られています。


今回もここでは、この湖でとれた
素晴らしいマス料理をいただきました。




ザルツブルク

  最後に訪れたのは、今回の旅の一番大切な目的地・ザルツブルク。  
 暮れの「チロリアン・スパイスブーケ展」に使う材料やチロリアン・テープを
 仕入れ、さらに展示会でお客様にご紹介する珍しいクリスマス・グッズを
 買い付けるのが目的で、精力的に動きました。


  



 
モーツアルト広場の楽聖の銅像
 
広場には大きな金色の球体の上に等身大の人形が・・



この地方の民族衣装を製造・販売
 するこの会社の本社を今回も
 訪れましたが、ここには
 ショールームと製縫工場、
 それに素晴らしいレストランが 
 あります。
 








トラップ大佐邸
  こちらは、1965年に日本でも
 公開されたハリウッドのミュージカル
 映画、「サウンドオブ・ニュージック」の
 トラップ大佐邸です。
 この家はトラップ一家がアメリカに
 亡命するまで住んでいましたが、
 このほどホテルとして整備され、
 間もなくオープンする予定で、
 ザルツブルクの新たな観光スポットと
 して注目されています。











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